今一番好きな作家といっても過言ではないポール・ギャリコ。
「スノーグース」「雪のひとひら」「ジェニィ」あたりが有名で、読まれた方も多いかもしれません。
私ははじめ「ジェニィ」で出会って、そのあといろいろ読みましたが、一番好きだ!と思ったのは「ハリスおばさんシリーズ」でした。
4作出ています。「ハリスおばさんパリへ行く」「ハリスおばさんニューヨークへ行く」「ハリスおばさん国会へ行く」「ハリスおばさんモスクワへ行く」
ハリスおばさんはロンドンのお手伝いさん。
年のころは60歳くらい、時間決めでお得意さんの家をまわる腕利きのお手伝いさんで、慎ましくも楽しく暮らしています。
シリーズ一作目ではそんなハリスおばさんがディオールのドレスに一目ぼれをして、二年間の節約生活でお金をためてパリに単身買い物へ。
二作目ではお隣の家の不幸な生い立ちの男の子のお父さんを探しにニューヨークへ。
私が読んだのはまだここまでですが、このあとの三作目ではなんと国会へ。
どれも何かを決意したハリスおばさんが、まわりの人をどんどん巻き込みながら夢を果たそうとする物語です。
ハリスおばさんは働き者で、正直で、ユーモアもあって、知恵もある頭のいい人。
けれど優しさゆえに大胆なことをしでかしたり、他人からは不相応に思える夢を諦めなかったり・・・読みながら一緒に手を握って頑張りたくなってしまいます。
物語の中でハリスおばさんの抱える問題に隣り合った人たちも、みんなそれを他人事でなく「私たちの問題」として一緒に乗り越えようと考えてしまう。そんな魅力があるのです。
これは昔、少年少女講談社文庫から出ていたものが一度絶版になり、復刊ドットコムで復活を果たした児童向けのシリーズ。確かにしっかりルビもふられて言葉も易しいのですが、子供も大人も楽しめるものだと思います。
「スノーグース」や「雪のひとひら」とはだいぶ雰囲気が違って、ユーモアたっぷり、書いてるギャリコ本人もとても楽しんで書いたんじゃないかなあと感じるような作品。
ギャリコのかく世界には、とてもまっとうな正直さとか優しさがあるのですが、良いなと思うのは、それが窮屈な正しさや押し付けがましい幸福感でないところ。
ハリスおばさんも、うそはつけないけど作り話のふたつやみっつはぶてるし、法律を守るのは大事だけれど、必要とあればそれをくぐりぬけるために頭を絞る。本当に大切な正義感と、生きるための知恵と優しさが共存していて、それがとても暖かいのです。
「ハリスおばさん」シリーズはそんなギャリコの良いところがめいいっぱい入ってる、代表作といっていい作品なんじゃないかしら、と思います。
そしてこのシリーズを読んでいると、行ったこともないイギリスが、というかイギリス人が好きになってしまうのでした。
ハリスおばさんのような人がたくさんいる場所、ロンドンへいつか旅をしてみたいな。
この投稿へのコメントの RSS フィード。 / TrackBack URI