クローズド・ノート
「クローズド・ノート」

本と出会う瞬間て、ほんとにいつあるかわからない。
この「クローズド・ノート」、過去に映画化もされ、話題にもなり当時とてもよく売れた本。
でもそのころはまったく心惹かれず、遠巻きに見ていたのです。

たまたま最近、この作家さんの別の本をおすすめされて読む機会があって、それが面白かったのでふと本屋さんでこの本を手にとって見たのです。そうしたらたまたま開いたページに私が最近買ってわくわく愛用中の万年筆の名前が出てきて。少し読むと、主人公の女の子が文房具屋でアルバイトをしていて、この万年筆は書き味がどう字の太さはどう、なんてやりとりが。それだけでとりあえず買おうと決めました。
この本を知った頃は今みたいに万年筆に興味がなかったし、今のタイミングだからこその出会い。

そうして読んでみたこの本は、予想以上に心に残るものでした。
部屋のクローゼットの奥に残されていた、前の住人のものと思われる日記と手紙。
そしてアパートの自分の部屋を見上げていた男の人との偶然の出会いと、ほのかな恋。
ストーリー自体はとてもシンプルで、物語の行方ははじめから察せられるのですが、それでもぐっと読まされて引きこまれていくのは、主人公が迷いながらも読み始めた日記にのこされた生活や感情があまりに生き生きとしていているから。
主人公の気持ちに大きな影響を与えて、ときには人生の先生みたいに導いてくれる、会ったこともない日記の主。主人公と一緒にどんどん惹かれていき、過去と現在の二人の女性の気持ちがインクが滲むように重なるようなラストまで一気に読んでしまいます。

時が過ぎ、書いた人はいなくなっても、そこに残された言葉が物語をつくって、心をつないでいく様は、本が好きな人にも、文字が好きな人にも、ペンが好きな人にも紙が好きな人にも、心躍るものなんじゃないかな。

日記に残された文字が万年筆の筆跡であることに気づいて、インクの色を文具雑誌のインクカラーカタログから探そうとする場面もあったりして、万年筆好きなら楽しめる細々とした部分がたくさん。マイ万年筆を持たない人は、自分のお気に入りを探したくなっちゃうかもしれません。

手紙に日記、万年筆。「クローズド・ノート」

2012年5月10日 00:06.
投稿者:マキ
カテゴリー:よむよむ, 文房具
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