図書館を舞台にしたお話をつづけて読みました。



図書館。
私もたまに行きますが、司書さんにお世話になるのは本を借りる手続きくらい。
どのお話も司書さんが利用者の調べものをサポートする「レファレンス・サービス」が描かれているのですが、図書館って、こんなことまで調べてくれるんだ!と正直驚きました。

れんげ野原のまんなかで」は新人の司書が働きはじめた図書館で、訪れる人々が持ち込んでくるささやかな、でも実はその人の人生に深く根ざしているような謎を、解いていくミステリー。
その謎から浮かび上がるものはちょっと怖かったり、人の心の重く苦い部分だったりもするのですが、れんげ野原に囲まれた図書館というのんびりとした舞台や、文章や視線のやさしさがそれを柔らかく包んでいて、とても気持ちよく読むことができます。

コミックの「夜明けの図書館 」も同じく新米司書が利用者の持ち込む難問に試行錯誤する物語。
本が大好きな主人公が念願の司書になって、夢をいっぱい胸につめこんで働くお話でもあります。
一方「おさがしの本は」は毛色が違って、こちらは同じ司書でも数年の勤務を経て、行政や利用者への不満からやる気を失いかけた男性が主人公。
そんなお役所仕事の主人公が、財政難による図書館廃止の危機に立ち向かうことになるのです。
ふんわりとした空気のある前の2作に比べると、仕事の理想と現実のジレンマを書いていて、主人公と一緒に図書館の存在意義なんかも考えさせられるお話になっています。

どのお話もそれぞれ良いのですが、どれも共通してレファレンス・サービスに持ち込まれる相談を解決する過程を、まるで探偵がひとつひとつ手がかりを検証して答えを導き出すように描いているのが面白いところです。

じゃあ、本物の図書館で、実際レファレンスサービスってどんなふうにやっているんだろ?という疑問をすっきりさせてくれるのがこの一冊。
図書館のプロが教える“調べるコツ”―誰でも使えるレファレンス・サービス事例集
図書館のプロが教える“調べるコツ”―誰でも使えるレファレンス・サービス事例集
これは物語ではないんですが、レファレンスの事例を小説風にして、わかりやすく教えてくれます。
これが意外にとっても面白い!
時にインターネットも使いつつ、データベースや事典を駆使して手がかりを追求し、そこから様々な本や資料を広く深く答えを探す方法は、とても参考になります。
こんな場所に無料で誰でも使えるデータベースがあったんだ!とか、図書館でレファレンス・ブックと言われているような、調べもののとっかかりになる百科事典や国語事典なども、改めてもっと活用してみたくなりました。

本好き、というとなんとなく小説が語られることが多いですが、世の中の多くの本は実はノンフィクション。「知」のための本なのです。
前に読んだ赤木かん子さんの「子どもに本を買ってあげる前に読む本―現代子どもの本事情」に書いてあったのですが、子どもが本好きでないと思ったら、物語を好まないだけで、雑学だったり伝記だったり、事実を書いた本は好き!ということはよくあるのだそう。
純粋に疑問に思ったこと、興味を持ったことを知るための本との出会いを楽しむきっかけに、図書館はとても素敵な場所だなと改めて思ったのでした。

図書館のおはなしたち。「れんげ野原のまんなかで」などなど

2011年12月1日 23:22.
投稿者:マキ
カテゴリー:よむよむ
タグ: , , , ,

[ indexに戻る ]

コメントを残す