これを手にとったきっかけは、「ルリユール」がでてくる漫画があるよ、というおすすめ。
ルリユールというのは工芸製本のことで、一冊の本を注文に応じて創りあげるもの。
このお話にでてくるのはルリユールだけでなく、キャンドルや万華鏡、器に靴なと、ものづくりをする人たち。
京都の路地の、長屋でお店をひらいて、細々と大量生産できないものをつくり、売って生活をしている人たちの物語です。
主人公は話ごとに変わり、らくらく食べていけるわけもない生活のなかで、ものをつくるために人と向き合う過程で生まれる恋。
そう、タイトルが恋花というだけあって、恋の話です。
たったひとりのお客様のためにものをつくる。そのためにその人に向きあう。
そのことで恋が生まれてしまうのはわかるようで、正直それじゃ仕事にならんだろーと思うところもあったのですが…。
恋愛だけに留まらない味わい深さがあるのは、つくることにこだわりを捨てられない人々の葛藤ゆえでしょうか。
個人的には製本のあれこれはとても面白かったし、それ以外も、ものをつくる過程を見るのが楽しい。
京都の雰囲気も味わえて、柔らかくも手強い京都弁もよいです。
一話だけだとちょっと物足りないのですが、三巻まで読んで、それぞれの主人公のお話が続いていくのを重ねて読んだときに面白さが増してくる、そんな短編連作でした。
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