言い寄る (講談社文庫)私的生活 (講談社文庫)苺をつぶしながら (講談社文庫)

田辺聖子さんの凄さを今頃知りました。
もともと恋愛小説をそれほど好んで読まないということもあり(苦手な作家さんが多い)、恋愛小説の名手といわれるような作家さんにはあまり興味が惹かれず・・・。
短編をいくつか読んでみたりはしていたのですが、面白いけれどのめりこんで読むほどではないかなあと、ちょっと引いて見ているような感じでした。

でも今回読んだ、乃里子三部作は、すごかった。
今まで読まずにいたことが、とても損をしていたような気持ちになりました。

言い寄る
私的生活
苺をつぶしながら

デザイナーの乃里子を主人公にしたこの3作は、一巻目は片思いと同時進行のいくつかの男女の駆け引きを、二巻目は結婚生活の終末を、三巻目は離婚後の一人生活を。3作通して31歳~35歳くらいの乃里子の人生を描いています。
一番凄いと思ったのは二巻の「私的生活」で、それは一つの関係の終わりを、その感情の流れをこんなに自然に書いてしまうことの凄さ。そこにいたるまでにはいろいろあるわけだけれど、それを変にどろどろとドラマチックに描くわけではなく、日々の生活の積み重ねのつながった先に「玉が出尽くした」時が来てしまう、そのどうしようもなさをさらりと書いてしまう。
人の感情の、突然針がふれるように切り替わる瞬間や、説明しがたい心の動き、も小さなことから大きなことまで、さらりと少ない言葉であらわしてしまうのです。
男も女も、一面的な良し悪しでなく、あまりよろしくない行動なんかも含めてみんなとても人間的に、魅力的に感じられるのも面白いところ。
田辺聖子さんの魅力として良く言われる、関西弁の気の利いたやわらかい会話。それもいい。
私は関西弁のなかの違いというのはわからないですが、細かい使い分けがあるようで、西の方はそのあたりも楽しめるのかもしれません。

今まであまり女々したものが好きじゃない、とか恋愛小説が好きじゃない、とかいう理由で田辺聖子を敬遠していた人は是非この三部作は試してみていただきたいな。

田辺聖子はすごかった。「乃里子三部作」

2011年1月23日 00:13.
投稿者:マキ
カテゴリー:よむよむ
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