そろそろくる (集英社文庫)

今日、生理がつらくていやだよという話を耳にして、思い出した本。
中島たい子さんの小説、「そろそろくる」。
PMS(月経前症候群)を題材にしたお話です。

PMSって言葉自体はあまり馴染みがないですが、生理前に体調を崩したりカンシャクを起こしたり突然悲しくなったりしてしまったことのある女の子は多いはず。
生理痛っていうのは、わかりやすい。それ用の痛み止めなんかもでているし、男の子だって、その最中はどうやらつらいらしいぞということは、なんとなく知っているに違いない。
でも生理が始まる前の数日間、心と身体のバランスをとりにくくなる期間があって、場合によっては真っ最中のお腹の痛みよりつらいときもある、ということは女の子自身もわかっていないことがあるかもしれない。
この物語は自分の心と身体を手探りしながら送る、ごくごく当たり前の日常生活のお話なんだけれど、ああ、こういうことあるな、そういうことなんだな、と胸のつかえをとってくれるような優しいお薬のような効果があります。即効性はないかもしれないけれど、ゆるゆると効くお薬。
PMS(月経前症候群)なんていうと大げさに聞こえるけれど、人によって差はあっても別に病気ではない不調というのは確かにあって、それを自覚せずにすごすのと、そういうものなのねって大きく構えて迎えるのでは気分は違う。
周囲の人だって、特別に大事にしてくれなくてもいいし、理解してくれなくてもいい。ただそういうことがあるんだって、知ってくれているだけで、違うんじゃないかなあ。

中島たい子さんはこの「そろそろくる」の前に「漢方小説」という小説も書いていて、そちらもおすすめです。
「漢方小説」は元彼の結婚の報をうけてから原因不明の体調不良におそわれるようになる31歳の女性のお話。
「ストレス」以外の原因も見つからぬまま病院をまわり、行き着いた先は漢方診療所。
「病名は「色々なところが弱い」というあなただけの病気です」という奇妙な診断を受けてはじまる漢方とのお付き合いを描いた物語は、これ自体が漢方のようなゆるやかな効能があるよう。
漢方のことも知ることが出来るし、物語の重要な鍵になる東洋医学の「受け入れる」考え方は、ついつい戦ってしまいがちな生活を変えてくれるかも知れません。

漢方小説 (集英社文庫 な 45-1)

からだのこと。「そろそろくる」と「漢方小説」

2011年1月12日 22:52.
投稿者:マキ
カテゴリー:よむよむ
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