残像に口紅を (中公文庫)

先日の忘年会で、それぞれおすすめの文庫を一冊持ってきて交換する、という楽しいイベントがありまして
その時いただいたのがこの本。筒井康隆「残像に口紅を」。

多分自分で選んで読むことはなかった、でも最高に面白い本。
かなり実験的な小説で、言葉がひとつずつ消えていくのです。
主人公である作家が、消えていない言葉を駆使して描く世界がその小説自体という仕掛けで
「あ」が消えてしまったら、「あ」を含む言葉も消えてしまう。
表現する言葉を失うことで、そのものの存在自体が危うくなってしまうその物悲しさや
残された言葉を駆使して世界を表現するその文章には、言葉への執念すら感じるようです。
言葉の好きな人なら、きっと夢中になって読んでしまうはず。

この、出会い方がなんとも幸せだなあと思った一冊を、今年最後のレビューにすることにしました。
本のプレゼント交換は、思わぬ出会いができる面白さももちろんですが
持ってきてくれた人の本のおすすめトークがなんとも魅力的。
本を読むことはとても個人的な行為だけど、自分が感じたことを人に伝えるための言葉を考えるって、とても素敵なことだと思います。
本好きな集まりはもちろんそうでなくても、機会があったら、ぜひぜひお試しください。

言葉が消えていく。「残像に口紅を」

2011年12月30日 23:56.
投稿者:マキ
カテゴリー:よむよむ
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